ひさしぶりに感銘を受けた本を一冊、ご紹介します。

まあ、うちの奥様が図書館から大量に借りてきて、
食卓に積み上げてた中の一冊なんですが・・・
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「父は空 母は大地」 寮 美千子 編訳
 2002年パロル舎刊の日英対訳版であります。

原文は1854年、3年間にわたる戦いに終止符を打ち、指定された居留地へと移動していったスクオミッシュ族とドゥワミッシュ族の代表首長であったチーフ・シアトルが、当時のワシントンの大首長(第14代大統領フランクリン・ピアース)に伝えてほしいと語った言葉を、白人入植者が英語に訳したもので、彼の名前(シアトル)がその地名になったほど、非常に有名な演説だそうですが、わたくしは今まで知りませんでした。

土地は買収するからお前らは居留地以外には出るな、という理不尽な条約を突きつけてきた白人政府に対し、無益な戦いを止めて敢えて従う際に、自分たちが暮らしてきた空や大地についての、いわば「申し送り書」や「引き継ぎ書」みたいに語られたものと、わたくしには感じられました。

土地を買収して自分たちだけのものにする、ということ自体がわからない・・・
空や大地、風の匂いや水のきらめきを、あなたはどうやって買おうというのか・・・

という部分からはじまり、編訳者による名文が続きますが、原文にも50種類以上の異なるテキストがあるそうで、特に人間と大地に関する部分を中心に訳者の「編訳」として、シンプルな原文との対訳版にされたようです。

さすがに訳文の画像を載せたりすることはできませんので、ぜひご一読をお薦めする次第なんですが、わたくしが特に印象に残った、川と湖に関する部分の原文だけ、ちらっとご紹介させていただきます。

(1/24追記修正)
松永洋介さんからいただいたコメントで、編訳者ご本人が、一人でも多くの方に知っていただきたいとの趣旨から、ご自身のHPに訳文全文を公開されておられることを知りました。松永さん、ありがとうございました。ご本人のHPにあった指示どおり、以下に紹介させていただきます。(原文サイトへのリンクもあります。)

「父は空 母は大地」の全文は
こちらをごらんください。

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英文そのものは、聞き書きを訳したシンプルなものですが、編訳者の訳文は、自然とともに生きる、彼らの思想までが伝わってくる文章で、その後のシアトル一帯の大開発を思うとなんとも哀しくなってしまいます。

まあ、現在のシアトル市が、世界をリードする環境先進都市になっているのが、せめてもの救いでしょうか・・・